🥋 チート900を数式で動かす
STAGE 6 ― 空中の重心 ―
クリア 0 / 9
STAGE 6

空中の重心

重心と放物線
🎯 ミッション
体の各部分の重さで平均する重心を計算し、空中では重心が放物線を描くことを式で説明しよう。離陸と着地の重心から放物線を1本に決める方法と、離陸の速さから跳ぶ高さを出す方法を身につければ合格。
未達成
ねこ博士
ステージ1で、空中では「体全体の重さで平均した位置」、つまり重心が、重力加速度 9.8 m/s² で落ちることを確かめた。今日は、その重心をどう計算するか、そして空中で重心が描く放物線を、どうやってアニメーションに守らせたかを話そう。まずは簡単な例からだ。長さ 3 m の軽い板の左はしに 2 kg、右はしに 1 kg のおもりを載せる。どこを支えればつり合うと思う?
うさ美
重いほうに近い所です。てこの原理で、「おもりの重さ × 支点からの距離」が左右で等しくなる所ですよね。支点が左はしから a m の所なら、2 × a = 1 × (3 − a) なので、3a = 3、a = 1 m です。
ねこ博士
その通り。この式を一般の形に直してみよう。重さ m₁ のおもりが位置 x₁、重さ m₂ が位置 x₂ にあるとき、つり合う位置 X は、左右の「重さ × 支点からの距離」が等しいという式から出る。「位置に重さを掛けて足し、重さの合計で割る」。これを重みつき平均といい、つり合う点が重心だ。おもりがいくつあっても、3次元でも、x・y・z それぞれで同じ計算をすればいい。
つり合いの式:m₁(X − x₁) = m₂(x₂ − X) 重心:X = (m₁x₁ + m₂x₂) ÷ (m₁ + m₂)
うさ美
体の重心も、体をいくつかの部分に分けて、同じように計算するんですか?
ねこ博士
そうだ。このアニメーションでは、体を胴・頭・太もも・すね・足・上腕・前腕・手に分け、それぞれの重さの割合を、人の体を測った研究の値に近いものにしている。胴が 43、頭が 8、太ももが片方 10、すねが 4.5、足が 1.5、上腕が 2.8、前腕が 1.6、手が 0.6 という割合だ。それぞれの部分の位置は、骨の両はしの真ん中(胴は両肩と両股関節の4点の平均)とする。下の図で、体の形が変わると重心がどこへ動くか見てごらん。
茶色の円が各部分の位置(円の大きさが重さの割合)、ピンクの点が重心、点線は重心から床へ下ろした線。インパクト(1.32 秒)では蹴り脚が高く伸びているので、重心は胴の中心より蹴り脚の側へずれる。「脚を3倍に重くする」と、重心が脚のほうへ大きく引っぱられる。図はドラッグで回せる
うさ美
体を大きく曲げていると、重心が体の外に出ることもあるんですね。インパクトのときは、蹴り脚のほうへ寄っています。
ねこ博士
走り高跳びの背面跳びでは、体を大きく反らせて重心をバーの下に通すことさえある。さて、ここからが本題だ。空中では、重心はどんな道すじを通るだろう。ステージ1で見たことを思い出してごらん。
うさ美
空中では、重心の上下の加速度はずっと −9.8 m/s² でした。横の向き(水平)には体を押すものが何もないので、水平の速さは変わらないはずです。
ねこ博士
そう。離陸の瞬間の重心の高さを y₀、上向きの速さを v₀ とすると、t 秒後の上向きの速さは v₀ − 9.8t。速さが一定の割合で変わるとき、進む距離は「最初と最後の速さの平均 × 時間」で出せる。水平は速さが一定だ。この2つを合わせた道すじが放物線だ。手足をどう動かしても、重心はこの放物線から外れられない。
上向きの速さ:v(t) = v₀ − 9.8t 高さ:y(t) = y₀ + v₀t − ½ × 9.8 × t² 水平:x(t) = x₀ + (水平の速さ) × t
うさ美
½ × 9.8 × t² のところ、確かめてみます。最初の速さが v₀、t 秒後が v₀ − 9.8t なので、平均は (v₀ + v₀ − 9.8t) ÷ 2 = v₀ − 4.9t。それに時間 t を掛けると v₀t − 4.9t²。4.9 は 9.8 の半分なので、ちゃんと合っています。
ねこ博士
いいね。ところで、アニメーションを作っていると、手足の形を直したり、動画に合わせたりするたびに、空中の重心がこの放物線から少しずつずれてしまう。そこで毎回、放物線に戻す計算をした。離陸のコマの重心と、着地のコマの重心は、床の動きとつながっているので動かせない。空中の時間を T とすると、この2点を通る放物線は1本に決まる。
うさ美
2つの点を通る放物線は、たくさんありませんか? 上に大きくふくらむものも、低いものも描けそうです。
ねこ博士
ふつうの放物線ならそうだ。でも今は、t² の前の数が −4.9 と決まっている。決まっていないのは v₀ と水平の速さだけだ。着地の高さ y₁ = y₀ + v₀T − 4.9T² から、v₀ = (y₁ − y₀ + 4.9T²) ÷ T。水平の速さは (着地の位置 − 離陸の位置) ÷ T。どちらも1つに決まるから、放物線も1本に決まる。あとは空中の各コマで、重心を放物線の上へ戻すように、体全体を平行移動する。体の形は変えないから、手足の動きはそのままだ。
横軸は空中の時間、縦軸は重心の高さ。灰色は、手足の形を直したあとに放物線からずれてしまった重心(ずれの大きさはスライダーで変えられる)。ピンクは離陸と着地の2点を通る「t² の前が −4.9」の放物線。矢印のぶんだけ、各コマで体全体を上下に動かす
うさ美
離陸と着地さえ決まれば、空中の重心の道すじは全部決まってしまうんですね。
ねこ博士
だからこそ、どれだけ高く跳べるかは、離陸の瞬間にもう決まっている。いちばん高い所では上向きの速さが 0 になるから、その時刻と高さが計算できる。このチート900は、上向き約 2.6 m/s、水平 約 1.8 m/s で離陸して、重心は約 0.35 m 上がり、約 0.52 秒で着地する。その間に水平に約 0.93 m 進む。
いちばん高くなる時刻:v₀ − 9.8t = 0 → t = v₀ ÷ 9.8 上がる高さ:v₀t − 4.9t² = v₀² ÷ 9.8 − v₀² ÷ 19.6 = v₀² ÷ (2 × 9.8)
うさ美
前に「ステップが遅いと、こんなに跳べるとは思えない」と直したのは、このことと関係がありますか?
ねこ博士
大いに関係がある。上向きの速さは、最後の一歩で床を強く蹴って作るが、それまでのステップで体がもっている前向きの勢いも、踏み込んだ脚で上向きに変えて使う。ステップがゆっくりだと、その勢いが足りず、見た人に「あれでは跳べない」と感じさせる。そこで、構えから踏み切りまでの時間を詰めて、ステップ中の重心の速さを毎秒約 1.3 m から約 2 m に上げた。空中の放物線は変えずに、地面の上の動きだけを速くしたんだ。
離陸の速さを決めると、重心の放物線が1本に決まる。黒い点線はチート900の実際の重心の道すじ(離陸〜着地)。上がる高さは v₀² ÷ 19.6、同じ高さに戻るまでの時間は 2v₀ ÷ 9.8
【このステージの成果】 重心=重みつき平均:X = (m₁x₁ + m₂x₂ + …) ÷ (m₁ + m₂ + …)(x・y・z それぞれ)。体は胴・頭・手足の部分に分けて計算する 空中では水平の速さは一定、上向きの速さは毎秒 9.8 m/s ずつ減る:y(t) = y₀ + v₀t − 4.9t²(放物線)。手足をどう動かしても重心は外れられない 離陸と着地の重心から放物線は1本に決まる:v₀ = (y₁ − y₀ + 4.9T²) ÷ T。空中の各コマで体全体を平行移動して放物線に戻す 上がる高さ v₀² ÷ (2 × 9.8)。チート900:上向き約 2.6 m/s で約 0.35 m 上がり、約 0.52 秒で着地

確認クイズ

Q1. 位置 x=0 に 2 kg、x=3 に 1 kg のおもりがある。重心の位置は?

Q2. 上向き 2.5 m/s で離陸すると、重心はおよそ何 m 上がる?(重力加速度 9.8 m/s²)

Q3. 空中で腕や脚を大きく動かすと、重心の道すじはどうなる?

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